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ジェンナーロ・イヴァン・ガットゥーゾと私、2

サッカーとかを愛する馬鹿な男のページ。

魔法少女まどか☆マギカ 「佐倉杏子」に関して

今世間を席巻しているこのアニメですが、自分もおっさんのくせしてどハマりしていてその中でも「途中で
出てきて途中で退場した」佐倉杏子というキャラがあまりにも不憫で自分の中で色々とドロドロした物が
溜まっているのでここで吐き出すことにする。

佐倉杏子は「正しいことを行っているはずの父の言葉を他人に聞いてもらう」為にキュゥベエと契約して
魔法少女になった。つまり「他人」(一応身内ではあるけれど決して自分のためではない)の為に悪魔の
契約をしてしまった。その結果、家族は自分を残して一家心中するという最悪の結果を呼んでしまう。
ここで愚考するのは「彼女はこの絶望的状況をいかに乗り切ったのか?」という点である。同じく他人の
為に契約をした美樹さやかはその絶望を自分の中で消化出来ず、魔女になるというキュゥベエの思惑通りの
結果を招いてしまった(ただ、彼女の場合「自分の体は空っぽで本体はソウルジェム」という事実を
知ってしまった事もあるが)。そこで佐倉杏子はどうだったのであろう。本編でのセリフから鑑みるに
おそらく正当な、しかし暴力的に魔女を狩り続けることで自分を保ったのではないか。佐倉杏子は本編で
「食物連鎖」という言葉を使い、使い魔を殺そうとする美樹さやかを止め、暴力的解決方法まで
取ろうとする。この時点で佐倉杏子にとっては「他人」はどうでも良く「自分」の為だけに魔女を狩る
存在となっていた。同じ魔法少女である美樹さやかを殺そうとした時点で、またそれまでのセリフから
考えてそれは間違いないであろう。親愛なる父から「魔女」と罵られ、自分だけ残された彼女にとって
他者は大した存在ではないのである。あくまで主体は自分。そうでなければ使い魔が人間を襲い、魔女に
なってから倒すという考えには至らないのではないか、と考える。

しかしそんな彼女に変化が現れる。殺そうとした美樹さやかの存在である。自分達の本体がソウルジェムで
あるとキュゥベエから明かされた時点で彼女は美樹さやかを慰める為、自身が住んでいた教会に美樹さやかを
誘い、慰めの言葉を掛ける。「全部自分が悪いことにすればいいのさ」。自罰的に魔女を狩ってきた彼女は
言う。そうすれば気が楽だと。しかしその言葉は美樹さやかには届かなかった。むしろそれでその心を頑なに
してしまった印象さえ受ける。逆に言えばこの場面が佐倉杏子にとって、美樹さやかにとってこれから来る
不幸への序曲とも取れる。そして佐倉杏子美樹さやかを放っておけない存在だと刻まれた場面になった。

そして佐倉杏子美樹さやかが魔女になるという場面を目の当たりにする。しかも魔女を倒すことよりも優先して
空っぽだと考えられる美樹さやかの体を救う。このシーンでの彼女はおそらく本能的に動いたのであろうが、
これが後々意味を持つことになる。暁見ほむらより魔法少女から魔女が生まれるという事実を聞き、美樹さやかを
救えるのではないかという考えをキュゥベエからの情報を元に実行をしようとする。美樹さやかの親友、鹿目まどかの
助力によって。ただその方法は皮肉である。鹿目まどかの「声」を魔女になった美樹さやかに聞かせるという、
あまりに拙い策だった。しかしこれは彼女が父の「声」を皆に聞いて欲しいが為に魔法少女となったこととの
対比になっているのである。彼女は父から魔女と罵られても、自分を残して一家心中されても、父の事を、父の
した事を信じようとしたのではないだろうか?

ここで話を少し変える。魔女の結界の中で佐倉杏子鹿目まどかの問にこう答える。「今が幸せな人間は魔法少女に
なんかなるものじゃない」。彼女はどれだけの魔女を狩ってきたのであろう。それでどれだけ自分を保とうと
したのであろう。そう思うと彼女は自分が不幸だったと自覚している。美樹さやかも自覚していたが、消化は
出来なかった。佐倉杏子美樹さやかはもっと話を出来れば不条理を曲げれたかもしれない。しかし親友さえ
言葉で傷つけてしまった美樹さやかにはそれは無理な話だっただろう。

佐倉杏子の考えた策は当然失敗に終わる(キュゥベエには「そんなの無理に決まってるじゃないか」と一刀両断
されている)。攻撃を得意とする彼女は鹿目まどかを守るため、守備に徹したので傷ついていく。そして美樹さやかが
親友である鹿目まどかに手を掛けた(つまり魔女には美樹さやかの心は既に残っていない)ことに激昂し、最後の
決断をする。すでに体力的に魔女を倒すことが不可能であることを悟った彼女は暁見ほむらに鹿目まどかを任せ
(親友の最期を見せたくなかったという心境があったのでは、というのはあまりにも贔屓目であろうか?)自分の
ソウルジェムの魔力を使っての心中、である。父から心中の相手にもされなかった彼女が、自分の最期にそれを
選ぶとはなんたる皮肉だろうか。しかし、自分中心だった佐倉杏子美樹さやかの為、鹿目まどかの為にその方法を
選んだ、つまり最後は「他人」の為に死んでいったのである。幸福ではなかったであろうが、彼女の中で何かが
変わった時だった。

最後に。佐倉杏子美樹さやかは出会いが違えばいい友達になれたのだろう。しかしそれを許さないこの作品から、
目が離せない。